日別アーカイブ: 2021年5月14日

AIには感動が作り出せない

皆さま、ゴールデンウィークはどう過ごされましたか?
今年のGWもコロナ過の中となり県外への旅行も制限されて
なかなか活発に動けない、もどかしい連休でしたね。

私も基本的に家や近所や県内にて過ごしていました。

趣味のバイクでプチツーリングや
同じく趣味のモータースポーツ観戦を自宅でしましたね。

そのモータースポーツ観戦での話ですが、
先日のF1スペインGPでのメルセデスチームの勝ち方が驚愕でした。
もうこれだけ長くモタスポファンをやっていると、
各チームのタイヤ交換戦略やピット戦略など、
そのドライバーの特性、気温(路温:タイヤの摩耗が変わる)
予選順位、練習走行の速さなどで決勝結果を予測しながら観戦します。

スペインGP まさか最後にメルセデスチームのハミルトンが逆転して勝つとは!

最後の15周まで本当に分かりませんでしたね。
ライバルのレッドブル陣営も「まさか!」だったと思います。

現代のF1のトップチームは戦略立案(ストラテジー)にAIを使っているそうです。
F1チームに関わる人の数は1チーム多いところで600人から700人との事
サーキットに帯同しているスタッフで200人~300人 レース中もファクトリー(チーム本拠地)で
走行中のマシンから送られてくるデータを基に解析しているスタッフが100人以上と、
1チーム2台のF1マシンを走らせるのにものすごいスタッフが
パソコン画面を見ながらデータ解析をしています。

その世界トップクラスの精鋭スタッフでも、AIが立てた戦略に勝てなかった!

AIは世界トップクラスの人間が何百人かかりでやっているストラテジを凌駕出来るんですね。
人間はマシンから送られてくるデータを見ていますが、一人一人は自分の担当のデータを見ています。
右前タイヤの空気圧をずーっとチェックしている人、左後ろのサスペンションの動きをずーっとチェックしている人、エンジンの4本目のエグゾーストパイプのCO2濃度をずーっとチェックしている人。
走行中のF1マシンには何百というセンサが付いていて、そのセンサか送られてくるデータを人間がみて、
それを各セクションのチーフエンジニアに報告し、各セクションのチーフは自分の担当部分の情報をトップエンジニアと監督に伝えます。
「このペースと気温だと燃費はあと4周はもちます」
「15分後にはタイヤ温度が2度上がりそうなので、ドライバーにペースを0.2秒遅く走る様に指示してください」
「気温はこの後2度下がりそうなので路面からの上昇気流が減りそうです。タイヤ摩耗ペースは上がるので予定より1周早くタイヤ交換しましょう!」
などです。

おもしろそうでしょ?

そういう事を予想しながら観戦するのは、とても面白い!

ところがAIは、そうやって人間が無線などを使って情報伝達している間に、一瞬で全てのデータをチェックして、自分の車の状況を判断。
同じ瞬間に対戦相手の加速具合から燃料残量を予測、ライバルは何周前にピットでタイヤ交換して、今はソフトタイヤだから、この気温ならあと何周でペースが0.3秒落ちてくるだろう。
今はライバルと24秒差だから、あと15秒でピット入口に差し掛かるドライバーに即座にピットインの指示を出し、ピットクルーにはミディアムタイヤの準備をする事と、15秒後にマシンがピットに来ることを

全て同時に判断し、決断し、行動が出来るんです。

 

あのハミルトンのピットインのタイミングは本当に絶妙でした。

ライバル含めて、どのチームも信じられなかったでしょう。
たぶん、ハミルトンのピットクルーも「え?今?しかもミディアム?」
って思ったと思います。

 

しかし、
見守る全員が頭に「?」を付けながら見ていた
ピットイン3周後に、
「あー!そういうことか!」
と、解説者も大声を上げていました。

まだ逆転していませんでしたが、
その時トップを走るフェルスタッペンは打つ手なし。
真似してすぐにピットに入ってタイヤ交換しても
ギリギリハミルトンの前には出られない。
とはいえ、今のタイヤはゴールまで摩耗が持たないから
少しずつペースを落として走るしかない。
そうなると、いつかハミルトンに抜かれる。

最速タイムを叩き出せる速さを持ちながら、
タイヤ選択とピットインタイミング、気温、手元に温存していたタイヤの種類
前半、タイム差を空けるためにフルプッシュしたことによるタイヤの摩耗度
などで、AIに凌駕され
チェッカーフラッグ前に勝負を失いました。

将棋の何十手も先を読む様な戦略を
その瞬間に立てられるんですね。

ちょっと熱くなって
既に長い文章になってしまいましたね。

面白いレースでしたが、
私には何か違和感というか、ちょっと気持ち悪さが残りました。

勝ったのですが、
何と言うか・・・

感動がない!

 

ドライバー同士のタイヤとタイヤをこする様な
意地とプライドのヒリヒリするようなバトル

監督が経験と勘とある時は賭けに出てでも勝ちにこだわる作戦
その監督から希望されたタイムを上回る速さでタイヤ交換をやってのける
プロのピットクルー達

もうタイヤのコンパウンドがないズルズルの状態なのに
後続車を抜かさせない渾身のドライビングテクニック

モータースポーツもスポーツなんです!

自分のチームがトップでチェッカーを受ければ
チームクルー、トラックサイド、ファクトリー
含めて何百人がガッツポーズで雄叫びを上げ
ハグしあう。

やはり人間でないと感動は産めないなあ

と、しみじみ思いました。

これからF1はAI同士の戦いになるのでしょうね。
エンジニアは何百人と首を切られるのでしょうか。

そうなると、ドライバーはAIの指示通りに車を走らせるだけの
まるでロボットです。
実際に今でも、「1周0.2秒遅く走って」と言われたら
ピタっと0.2秒遅く走れるんですよね。
世界でトップ20に入るドライバーは・・・

 

そんな勝利になんの意味があるんだろう。

スポーツは勝敗が大事だと思っております
勝ったチームの感動、
惜しくも負けたチームのくやしさ
それがあるからまた次戦が楽しみ!
となるんです。

AIやロボットももちろん効率化や良いモノを提供するために
必要なツールですが、

目的のためにいつの間にかAIが主体になって
人間が道具(ツール)の様な世界になるのかしら
と未来が心配になります。

こんな感じなら未来のF1を観る人はいなくなるでしょうね。

 

やはり、人間に必要なのは感動や幸福感

それはAIでは産み出せません。

それを改めて感じた連休でした
(いや、そのうちのたった1.5時間ほどのレース中でした)